出版交渉とドラマの話 [取材]
【3日目】・・・②
『恋愛時代』の中国出版にあたり、他の出版社数社ともお話をさせていただきました。その中からこの出版社に決めた理由はLin Yaoの存在が大きかったと思います。
事前に中国に行く前に、電話やメールで何度か打ち合わせをしていくうちに、とても優しく、こちらの話も的確に理解され、信頼のできる方と感じたからでした。実際にお会いしてその感覚は間違っていなかったし、信頼感は確信へ変わりました。
その日、オフィスビルに到着し、1階からLin Yaoさんにお電話を入れ下で待っていました。待ってる間何度かエレベーターの扉が開き人々が乗り降りしていました。私は何となく扉を見つめていました。すると何度目かのドアが開いた瞬間、彼女が降りてくるのが分かりました。逢ったこともないのにひと目で彼女と分かりました。パンツ姿におしゃれなスカーフをした小柄で可愛らしい女性でした。あちらも私たちにすぐに気づいたようでした。瞬時にお互いを確認しあったこのときの感覚はとても不思議でした。
縁というものがあるのでしょか・・・。
出版に関しての話し合いはとても上手く進み、細かな条件面のお話まですることができました。
今回のお話がスムーズにいったのは『恋愛時代』が韓国でドラマになったことも大きかったと思います。
今上海は、かつての日本のような韓流ブームが起こっていて、みなさん仕事が終わるとさっさと家に帰り韓国ドラマを見るそうです。
韓国においても、反日感情や文化の違いといったものがあるにも関わらず、純粋に原作を評価していただき、ドラマも高視聴率で、韓国版『恋愛時代』の原作本も好評いただきました。
日本と比て、韓国ではあまり書籍の売り上げは望めないというのが今までの常識でした。そんななか5万部という驚異的な売り上げを記録しました。
この情報をいただいたときには本当に嬉しかったです。日本の作品が他国で受け入れてもらえたことが嬉しかったです。きっと野沢がいたらどんなに喜んだろうと思いました。
交渉が終わり、すこし雑談をしているときに、日本のテレビドラマの話題になりました。Lin Yaoさんは「東京ラブストーリー」が大好きだったらしくしばらくその話題で盛り上がりました。
テレビドラマの話だったら、野沢脚本の作品も何か知ってるのかしらと気になり『眠れる森』は知っていますか?と訪ねたら、とてもよく知っているし大好きですとおっしゃって、真犯人(中村トオルさん)だった方とご親戚の方がそっくりと、興奮気味に話してくださいました。
その『眠れる森』は野沢尚が脚本を書いたのですよと言うと、本当に驚いて、脚本家と小説家の野沢尚が同一人物と知って、さらに興味を持っていただけたようでした。
規制の厳しい中国では多くの場合きっと非合法な方法で、日本のドラマ観ているのだとは思いますが、そこまでして、これほど多くの作品を観てくださって、愛してくださってる事実は本当に嬉しかったです。
著作権を持つ身としては非常に複雑なのですが、それだけ日本のドラマや原作は素晴らしいのだということでしょう。
もう少し時がたって権利問題もきちんと整備され、中国の人たちもたくさん日本の作品を観られるようになったらいいと思いました。
so cuteな蔺瑶(Lin Yao)さんです。