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『恋人よ』 [小説]

恋人よが間もなく韓国で翻訳出版されます。
日本でも上下巻で出版されていますが、皆さまもうお読みになりましたか?やはりドラマでご覧になった方のほうが多いのでしょうか?

ドラマ恋人よの脚本作りに向けての野沢の思いを私なりに編集してみました。
 2組の新婚夫婦として隣同士になった4人の男女が、それぞれに秘密を抱えながら愛に苦しみ、愛を獲得しようとする切ないまでの姿を見つめる恋愛心理劇。

「私の人生は私のものなのに、どうして私自身のためにしか使えないのか・・・・・・?」
 ヒロインの情熱はこの言葉に集約される。しかし、このようなエゴイズムを貫き通すことが恋愛時代の特権だとしても、結婚生活を得てしまった男女には許されるはずはない。
 許されない不倫愛を一貫して描いてきたのが、『親愛なる者へ』『素晴らしきかな人生』『この愛に生きて』の夫婦3部作であった。3作品の主人公たちは結婚生活の足枷から逃れ、ある意味で身勝手に、本能的に愛を求めた。
 しかし、恋人よは不倫愛に対して揺るぎない価値観がある。「性というものは大切なのだ。誰かを裏切るセックスや、その場限りのゲームみたいなセックスは、自分の生命に傷を刻む」
 この恋人よの主人公2人は、最後まで抱き合わない。
 それでいながら、奇跡のような愛の極みに到達する。
 プラトニックと呼べば薄っぺらになってしまう。モラルの回復という教条主義でもない。セックスレスという流行への迎合でもない。
 体で相手を知ってしまった時から、男と女の限界が露わになる。性に溺れるほど絶望が彼方に見えてくるのではないか・・・・・・。
 ヒロインはそれを知っているから、夫以外の異性に恋をしたとき、自分の精神の強さを試してみようとした。
 抱かない愛。抱かれない愛。 
 精神的な愛で生涯結ばれてゆく男と女。

 精神的絆となるのが・・・・・「手紙」。
 私書箱を通じての手紙の交換である。
 それは、塀で隔絶されていようと隣人として常に10メートル以内に生活している2人にとって、極めて遠回りな感情の伝達方法である。
 しかし、その遠回りにこそ美しさがあり、燃えるような情熱がひそむ。
 現代人は手紙を書かなくなったが、ドラマでは、このすたれた表現形式を重要なモチーフとしている。
 瞬時の切り結びである対話や電話と違って、手紙においては言葉は選ばれ、ゆるがせにできない形を与えられる。文章は消えることなく、時間を超えて残り、思わぬ時に顔を出して、手紙を与えられた者の人生を左右する。
『徹底して耐える愛』を選んだ2人に、文章の交換というものが信じられないような熱情をもたらしてゆく。
 朝、道で顔を合わす。「おはようございます」と親しき隣人の挨拶を交わした2人には、実は、私書箱に潜む狂おしいラブレターが待っている。
 もちろん、恋の文章だけでは2人は幸福になれなかった。
 徹底的に耐えた分だけ、破綻するときの姿は激しく、痛々しい。
 2組の夫婦は、全てを曝け出してしまえは、すなわち2組の不倫関係であったことが分かる。
 あらゆる秘密が吐き出された時、4人は解体し、一種の「夫婦交換」状態となる。もちろん新しい男と女の関係にも、地獄はあった。
 そんな4人が、お互いの傷を克服し、生涯の友人となってゆく。
 エンディングで待っているのは一人の「死」。
 しかし、残された人間たちにもたらされるのは、一通の手紙であり、手紙が予言する1つの奇跡だった。

 このドラマは夫婦劇、不倫劇といった通俗性を衣にかぶった『文学』であると思う。
 
 真紅の花々が群生する沖縄の断崖を、一人の少女が輝くはかりの笑顔で飛び跳ねている・・・・・。 私はこのシーンで涙があふれ、エンドクレジットが終わってもその涙は止まりませんでした。 皆さまはいかがでしたか? 

 

 

恋人よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

恋人よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 野沢 尚
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/06
  • メディア: 文庫

恋人よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

恋人よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 野沢 尚
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/06
  • メディア: 文庫

 


2007-02-19 07:14  nice!(6)  コメント(13)  トラックバック(0) 
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コメント 13

野沢様、記事を読ませていただいて、あの時の感動が蘇ってくるようです。私の場合、ドラマが放送されることが決まって、先に原作本が出たので、本が先でした。

でも冒頭の主人公の一人のセリフ、そして手紙(読み返せる言葉)にこの頃の自分が重なります。私もblogという媒体を通じ、たくさんの方からコメントをいただいて、素敵な言葉を読み返せることに喜びを感じています。

つい最近もある方へ手紙を書いたのですが、blogと異なり、自分の想いを伝えるのはとても難しい、しかも韓国語でしたから(苦笑)さらに難しく、でもとても楽しい体験でした。返事がないのが玉にキズですが、「恋人よ」の文通は、ちゃんと返事がありましたから。

心で繋がっているとはいえ、やはり人は温もりを求めてしまうのだと思います。でも、ドラマの中で一番印象に残っているのは、沖縄へ秘密旅行をした二人が空港で足止めになり、待合室でのシーンです。それが後々の小指の逸話となっていくのですが、このシーンの内面の激情と、愛おしさ、というのが胸を締め付けられるようで。

真紅の花の奇跡も、素晴らしかった。だからこの物語、私は好きなんだと思います。個人的な意見ばかりで申し訳ありません。でも、ドラマの原作本を買うことはほとんどないので、これは今でも大切にとっている物語本です。
by (2007-02-20 22:49) 

かなめ

「恋人よ」のレビューを投稿させていただきました、かなめと申します
私にとってこの作品は人生観も変わるくらいの衝撃でした
其の分、思い入れも強く、つい拙い文章でレビューを投稿しちゃいました。

DVD化されるまではずっと何年もドラマを
ビデオテープが擦り切れるまで見てましたが
原作本を手にした時は、映像よりも物語にのめり込んでしまい
あらためて「野沢尚」という書き手のパワーに驚いた作品でもあります。
沖縄に所用で行った際も一番に浮かんだのはこの物語です

今でも、すごく落ち込む事があると、DVDを見ます
最後に予言の手紙を書いて、真っ赤な花を咲き誇らせた
「ひまわりみたいに笑う」人のように、強くありたいと思うからです。
もちろんわ~っと泣いてスッキリする意味合いもありますが(苦笑)
私も、ひまわりみたいに笑う人だった、と葬式で言われようと思っています。
私の中では「恋人よ」が恋愛観の原点であり
時に勇気づけられ、時に考えさせられ
美しい台詞に驚かされた、本当に大好きな作品です。
by かなめ (2007-02-21 22:56) 

野沢

ピョルさま
コメントありがとうございます。
どんなに時代が移り変わっても手紙はいいですよね。一文字一文字思いを込めて、考えながら書く手紙は時間を超えて生き続けるように思います。野沢自身もファンのかたや仕事の関係者、友人んなどからいただいた手紙は大切に全部とってありました。大きなダンボール箱4つもありました。それらは今も大切に私が保管しています。どうしても捨てられなくて・・・。
恋愛時代から野沢が私にくれた手紙もすべてとってあります。結婚してからはクリスマスやお誕生日だけしかいただけなかったけど、今では大切な宝物です。
by 野沢 (2007-02-22 00:36) 

野沢

かなめさま
コメントありがとうございます。
レビューのときにお礼のコメントが出来ませんで申し訳ありませんでした。かなめさんのおかげで、作品紹介も華やいできました^^ありがとうございます。
「恋人よ」私も大好きな作品です。
ビデオが擦り切れるほど何度も鑑賞してくださったなんて、野沢が聞いたら涙を流して喜ぶと思います。私も嬉しいです。
ありがとうございます。
この作品でも沖縄が出てきますが、「ふたたびの恋」でも沖縄が舞台になっています。
野沢自身沖縄は大好きな場所だったようです。
初めて2人で旅行に行ったのも沖縄、最後にシナリオハンティングで行ったのも沖縄何だか不思議です・・・。

実は今年「ふたたびの恋」の舞台になった場所に行こうと、昨年から思っていました。
少しずつですが野沢作品の舞台になった場所を時間を見つけては訪ねてみたいと考えています。少しでも野沢の見た景色、体験したことを共有したくて・・・。
by 野沢 (2007-02-22 00:52) 

ノリ

はじめまして。ノリと申します。つい先日、自分のブログに「恋人よ」
の感想を載せたばかりです。TBは恐れ多いのでもし暇ができましたら
ご覧下さい。私もあのラストで涙した1人です。
ほんとうに優れた作品だと思います。
ドラマもとても質が高かったように思います。またドラマ化されるようで
そちらも期待しています。
by ノリ (2007-02-22 10:00) 

野沢

ノリさま
早速ノリさまのブログにお邪魔させていただきました^^
ご覧になって下さった皆さまが、ラストで涙できたら、この作品に込めた野沢の思いは間違いなく伝わったのだと思います。
これからも遊びに来てください^^
by 野沢 (2007-02-22 10:32) 

野沢様、コメントの返信と素敵なエピソードありがとうございます!

私も手紙だけはどうしても捨てられませんね。手紙は綴ったその方の想いがこめられているので。特に亡くなった母が書いたもの(メモみないなものですが)はずっと持っていたいと思います。

そして、ご結婚されてからも記念日に御手紙をいただけるなんて、なんて素敵なんでしょう!!私はまだ独身ですが、そんな素敵な旦那様だったらいいな、と思っています^^
by (2007-02-22 13:13) 

私にはこのドラマは保存版のビデオです。
役者の方が素晴らしいのは勿論、言葉一つ一つが色んな感情をもたらせてくれました。小説版も、何回読み直したか・・・。韓国の方達が今度は感動するのですね!素晴らしい!
by (2007-03-11 17:02) 

野沢

ピョルさま
素敵ですね。
お母様の書かれた文字や言葉はずっと残り、いつまでも
思い出と共にそばあって支えになってくれますよね。
by 野沢 (2007-03-13 21:59) 

野沢

Peridotさま
ありがとうございます^^
ドラマも小説もご覧いただいてるなんて感激です。
この作品の中でも、素敵な言葉がたくさんあって、私も大好きな
作品です。
韓国ドラマでも「恋人よ」小説の本質的な部分がきちんと伝わり、
多くの方々に感動してもらえたら、こんな素晴らしいことはないと
思います。
by 野沢 (2007-03-13 22:04) 

teru

初めまして。
現在、私は韓国で暮らしています。
今、「恋人よ」の韓国ドラマを見終わりました。
私が20歳頃に見た日本でのドラマ「恋人よ」は、若い自分にはすごく衝撃的で、小指を切ってしまう心情が理解できるようなできないような・・。
今回の韓国ドラマ「恋人よ」を見ながら私がどういう風にストーリーを感じていくのか、自分自身があの頃とどう変わったのか・・・とても楽しみです。小説も頑張って韓国語で読んでみようと思います。
by teru (2007-03-30 21:48) 

野沢

teru さま
コメントありがとうございます。
20歳の頃に日本での放送作品をご覧いただいたのですね。
ありがとうございます。
確かに、共感を得るには少し難しい年齢だったと思います。
積み重ねた歳月によって感じ方も変わると思いますので、是非、
日本の原作小説にも挑戦してただきたいと思います。
野沢のメッセージが一番伝わると思います。
私自身、何度読んでも、ストーリが分かっていても涙してしまいます。
素敵な作品だと思います^^

昨日のSBSでのドラマ放送をご覧になったのですね。
いかがでしたか?
日本からは放送を見ることができないので、SBSの掲示板を
読んでみたりしましたが・・・。
反応は良いように感じましたが、番組のサイトなので良いこと
ばかりなのでしょうか。
率直なご意見、感想などお願いできたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いいたします。
by 野沢 (2007-03-31 14:17) 

Sho

このドラマの第一回のラスト。キラキラ光る陽の光の中から、隣家に越してきた夫婦が見える。何気ないような、いたずらっぽいような表情で、
颯爽と動く保奈美さんと、あっけに取られた岸谷吾朗さんの表情、BGMが忘れられません。
四人で鍋を囲んで告白を始める場面、バーを営む夏八木勲さんのダンディーさ、赤ん坊誕生の時、ろうそくに埋め尽くされた結婚式、・・・印象的な場面が沢山あります。

「プラトニック」と「性愛」というのは、私にとってとても大きなテーマです。野沢氏は、一つの答えを提示してくださったように思います。

「想い」は、溜めることによって醗酵し、凝縮されていくのですね。
手紙、私書箱というツールを使われたのも非常に斬新でした。
時間を溜めることによっても、想いは募るのだと再認識させられました。

京香さんのセリフで、「(彼女の)文通の相手は古風な人。彼女が字を追う目の動きが上下。縦書きですもの」というようなところがあり(うろ覚えで申し訳ありません)、一本とられたような気になりました。

プラトニックと性愛と、どちらが深いとか強いとか一概に言えないと思いますが、それを考えるときに、このドラマはとても本質的なことを提示してくれていると思います。
もし、性愛をともなわず
>奇跡のような愛の極みに到達
できるのだとしたら・・・ 私はそこまでいってみたいと思います。

改めて、拝見したくなりました。
by Sho (2007-08-05 22:22) 

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