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『ふたたびの恋』 カクテル・≪続き≫ [舞台]

≪続き≫

次の注文はカクテルではないのですが・・・シェリー酒
澤田がかつて愛した女性と、手に手をとって、南へ南へと駆け落ち。その話を熱心にメモを取りながら聞き入る晃一。そこへ新子が入ってくる。入れ違いにbarを後にする晃一。

        晃一はいなくなり、新子と澤田だけになる。

新子・・・・・・冷えたシェリー酒があれば。
澤田・・・・・・ティオペペがございます。


6番目のカクテルは晃一が注文したソルティードック

晃一・・・・・・2月はどこも不景気だよね・・・(飲み物を考え)グレープフルーツ・ジュースに
        ウォッカをちょっぴり垂らしてもらおうかな。
澤田・・・・・・ソルティードックでよろしゅうございますね?
晃一・・・・・・うん、何となく塩漬けの犬って感じで・・・・(読み終えたスペンサー・シリーズ
        に悪態)もうお前とは決別だ。お喋り探偵め。

新子が注文したもう1つのソルティードック(ハーフムーン・スタイル)

新子・・・・・・助けてほしいの、わたしを。
                
        その言葉の意味を考えた後、晃一はバーの入り口を見やる。
        澤田も警戒の眼差しで、

澤田・・・・・・誰か。よからぬ者が?
晃一・・・・・・有名人狙いのストーカーか?
新子・・・・・・違うの。そんなんじゃなくて・・・・・・。
晃一・・・・・・  ・・・・・・・。
新子・・・・・・(気を落ち着かせようと)何飲んでるの?
晃一・・・・・・ソルティードック。
新子・・・・・・私もそれ頂戴。
澤田・・・・・・かしこまりました。
新子・・・・・・ただし!・・・グラスの縁のスノー・スタイルだけど、半分にしてほしいの。
        なぜかって言うと、塩味なしで飲みたいときがあるから。

        どんな時でも、酒の注文だけは細かい。

澤田・・・・・・ハーフムーン・スタイルですね。
 


7番目のカクテルはグリーンアラスカ

澤田・・・・・今夜はお2人にふさわしいカクテルを作って差し上げましょう。

        シェイカーと酒瓶がカウンターに置かれる。

澤田・・・・・・ドライジンを4分の3(入れる)グリーンシャルトリューズを4分の1(入れて)。

        カラカラと精根込めたシェーク。
        カクテルグラスに注ぐ。ほのかな緑色。

澤田・・・・・・その名はグリーンアラスカ。生まれは1920年台のロンドン、スピリッツは
        男、リキュールは女。相性のよさとシンプルな組み合わせが真骨頂の、最強
             のカクテルでございます。

        舞台に光が満ちる。
        すでに晃一と新子はストーリー作りを始めている。澤田が2人に酒を。


虚構と現実が交差して終えたシナリオ作りの翌日。
8番目のカクテルマティーニスイート・マティーニ

        晃一がカウンターで飲んでいる。とびきり辛いマティーニだ。

澤田・・・・・・ ・・・あれから逢木様とは?
晃一・・・・・・顔を合わせていない。午後プールサイドのあっちにいたけど、お互いセッショ
        ンする気分じゃなくて、通りすぎた。 
澤田・・・・・・今晩中にストーリーを完成させないと、逢木様はお困りになるんじゃないです
              か?
晃一・・・・・・どうでもよくなってきたよ。どうせ新子の仕事だ。あとは自分で考えろって突き
              放してやろうかな。

           <中略>

         飲み干して、おかわりをもらう。

晃一・・・・・・ベルモットの種類を変えて、スイート・マティーニにしてもらおうか。
澤田・・・・・・ヤワな飲み方になりましたね。
晃一・・・・・・まったくだ(と苦笑) 


次はカクテルではなく、『シングルモルト・ウイスキー

        シングルモルト・ウイスキー。グレンファーグラス。
        澤田はふたつのグラスに氷を落とし、チェ―さーの水も用意して、カウンターを
        後にする。

澤田・・・・・・室生様。お願いがあります。
晃一・・・・・・ ・・・・・・・・。
澤田・・・・・・お2人のドラマで、どうか私を泣かせて下さい。数々の隠れ家であなたのドラ
         マに泣いて以来、私はテレビドラマを見て泣いたことがありません。彼女も同
              様のはずです。どうか私たちの心を揺さぶって下さい。


9番目のカクテルはギムレットせっかく2人で作り上げた原稿を破ってしまう・・・・・

晃一・・・・・・(澤田に)祝杯になりそうにないが、最後に、彼女と飲みたい酒がある。
澤田・・・・・・はい。
晃一・・・・・・ギムレットを、俺たちに。

        澤田はその酒の意味を悟る。

澤田・・・・・・ギムレットには早すぎる・・・・・ですか?
晃一・・・・・・ ・・・・・(頷く)。
澤田・・・・・・レイモンド・チャンドラの小説、確か題名は・・・・・・。
晃一・・・・・・長いお別れ、だ。


10番目のカクテルは『     』です。本には名前がないのですが・・・。
ベースはウォッカ。そしてアプリコットリキュール。伊予柑の果汁。仕上げに伊予柑の皮を
さっと絞る。


以上。10種類のカクテルをご紹介しました。いかがだったでしょうか?
それぞれのカクテルに、物語の思いを込めながら、心温まるラブストーリになっています。
(私には男の友情も垣間見えました^^)
ところで、最後のカクテルの名前を募集してみたいのですが・・・・・。
この本を読んでいただき、またはDVDをご覧いただき、皆さまが感じた最もふさわしいと
思う名前、お願いします。

 

 


2007-06-18 00:17  nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
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コメント 2

りんこ

「ふたたびの恋」が上演された7月が、もうすぐやってきますね。
このお芝居も私の中では色褪せない作品のひとつです。

先日、久しぶりにDVDを観ました。
カクテルはなかっので、ビールを飲みながらのほろ酔い気分も手伝って、途中からは涙、涙・・・。
でも、とっても温かい気分でした。

最後の新作カクテルの名前を考えてみました。

『Prayer of the love ~恋の祈り~』

晃一と新子、そしてドラマの中のふたりの恋が、ただただ幸せでありますように、お祈りしています♪







by りんこ (2014-06-24 15:50) 

野沢

りんこさま
コメントありがとうございます。
「ふたたびの恋」は野沢脚本では最後の舞台作品となってしまいましたが、私にとっても印象に残る作品です。普段、仕事場で作業をしているため、どのように作品を生み出しているのか見たことがありませんでした。ですから、晃一が作品作りを語るシーンでは「野沢自身もこんな風に作品作りをしているのかな…」と思いながら舞台を観たことを覚えています。

当時は小さくて父親の作品を理解できなかった子供たちも成人となり、もう一度「ふたたびの恋」の再演を出来ればと思っています。
作品の中から父親を感じてくれたらと思いますが…。いろんな人を巻き込んでいかなくてはならないため、簡単なことではありませんが、できるだけ頑張りたいと思います。


by 野沢 (2014-06-30 13:18) 

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