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storyteller [野沢コメント記事]

1993年シティーロード2月号に掲載されたインタビュー記事です。
スカパー749ch「アジアドラマチックTV」にて、放送が予定されています『雀色時』にふれたコメントがありましたので紹介します。少し長文になります。


          

              2時間ドラマに続いて
                「親愛なる者へ」で
            連続ドラマでの評価も得た脚本家

――――2時間ドラマ、映画での仕事が多かった訳ですが、連続ドラマを書く上で違いや狙いはありましたか。
野沢  ふつう連続ドラマの仕事は、視聴者の声を反映して作っていくらしいんですけど、僕は基本的には視聴者をあまり信用していないし、彼らの嗜好に合わせていくと、どんどん自分からかけはなれていく怖さがあったんです。結局は自分が見たいと言うドラマを信ずるしかない。だから今回は全放送分のストーリーを放送前にかなり細かい段階まで作りました。そこでひとつ自分の目論見としてあったのが視聴者を緊張させたいという事で、どれだけ自分の話術に身構えて見てくれるのか試したい、不遜な言い方になるかもしれないけど視聴率とは逆の意味で、今のお客がどの程度のもなのか計ってやろうという意気込みはありました。
――――
連続ドラマの質が低下した理由をどう考えますか。
野沢  口当たりのいい初心者向けドラマが当たってそれを連発した時に、視聴者も作り手もそれに安住してしまったんですよ。作り手が視聴者のレベルにあわせてしまった事で、視聴者もある程度の事しか期待しなくなってしまった。お互いに甘やかしあってしまった結果です。 
――――
今、ドラマを書く上で何が必要とされていると思いますか。
野沢  要はストーリーテリングの次にくる、その物語と自分との関係というか、その物語に中にいかに自分のテーマを持ち込んでいくかという事ですね。基本的に物語と言うのはもう出尽くしています。早い話レンタルビデオ店に行けば自分のやりたいと思っている物語がいくつか発見できるんですよ。そんな時代だから結局は今、物語を生かすも殺すもアレンジの仕方しだいになってるんだけど、そのアレンジの仕方だけにとどまってしまうと、やっぱり「作家の顔」はもてないんですよ。例えば「親愛なる者へ」だったら、その時自分が直面してた夫婦の実生活とか、女房との将来とかすべて言いたいっていうのが明確にあったんですよ。まあプロとしてやっていく時には、自分がつきつめられるテーマといってもそんなに見つかるもんではないんですが、どんな物語の中にも自分を納得させるものをみせつけていかないとね。そうやって「作家の顔」をもった時に、語り部として本当に何かを語っていけるようになるんじゃないかな。
――――
演出家・鶴橋康夫さんとの2時間ドラマは高い評価を受けている訳ですが、『雀色時』を例にとって、その作劇法を教えていただけますか?
野沢  最初にまずお客=視聴者へのテーマを見つけるんですね。この場合、坂本弁護士の失踪事件で、それで取材していくと背後に確実に新興宗教の影が見えてくる。でも、犯罪の動機として宗教っていうのは狭くて、特殊なんですよね。これではドラマに普遍性をかちえないなと思ったりする。で、まあそうやってテーマをこねくり出した次にストーリーテリングという段階にきて、ここでいろんなリファレンスをとっていく。例えば今回であれば『評決』、『JFK』、『羊たちの沈黙』、『背信の日々』を参考にして、これからの作品の中から使えるものとかインスパイアされるものをつかんできて物語を構成していくわけです。それでだいたいストーリーテリングが見えてきた次に自分へのテーマを見つけにかかります。で、
『雀色時』は犯罪者の動機を商社マンの出世争いというところにもってきた時に、僕の中では仕事人間の末路を書きたいというものが、固まっていきましたね。自分の中のどこかにひょっとしたら、自分もそうなってしまうかもしれない怖さをみつけて、それを自分のテーマにしてもう一度ストーリーテリングの段階にもどり修正していく訳です。そこでゲーム的な犯人探しのストーリーを削ぎ落として自分のテーマが入るようにドラマを作り直す作業になる。こういうストーリーテリングと自分のテーマとをいきつ戻りつしながら物語を組み立てる作業が一番大事だと思いますね。ここに、ドラマが一流になるかならないかの境目があるような気がします。


2007-05-21 03:04  nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
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コメント 2

さんちゃん

野沢さんのドラマって、(当たり前なのかもしれないけど)テーマがあって、それについて共感したり、考えさせられたりするので、とてもスキです。

最近のドラマがつまらないとかよく聞くけど、
テーマがあるドラマって最近というか、
テーマが伝わるドラマって昔からか?
あまりないように思います。

14歳の母とか、ちょっと重たいテーマはあるけど、
日常のちょっとしたことにたいしてのテーマって難しいのでしょうか?
by さんちゃん (2007-05-22 23:18) 

野沢

さんちゃんさま
コメントありがとうございます。
私も最近欠かさず見たいドラマが無いように感じます。
もっと、私たちを考えさせ、人生に影響を与えるようなドラマが見たいですね。とは言え、数年前野沢が言っていたように、ネタは出尽くしてる訳ですから、作品を作る作家は大変なのでしょ。
でも、どんなに使い古されたネタであっても、そこに現在を映す人間の描写があったら作品は新たな輝きを持つ作品になると思います。そんな作品を書いてくださる作家のかたが増えることを期待しています。そして、もっと視聴者の私たちに考える機会を与えて欲しいですね^^
by 野沢 (2007-05-23 12:36) 

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